矢沢永吉 / E’

矢沢永吉は、不良のカリスマなロックンローラーというパブリックイメージがあるように感じますが、実際には日本有数のソングライターでもあります。
1984年に発表されたこのアルバムは、ソングライターとしての矢沢永吉の最高傑作であると思います。
そのソングライティングの技術の高さはいろいろな所にあらわれていますが、たとえば6曲目に収録されている「LONG DISTANCE CALL」のコード進行もそのひとつで、ほとんどジャズ和声のレベルです。
イントロから歌に入る瞬間に転調します。歌が始まると、同じコードであるGがGmaj7からG6へと変化、次のコードはただ変化するのではなくベース音を共通させたスラッシュコードB7/C#からEm/C#と流れ、その半音下のCmaj7へと解決します。
さらにそのCmaj7がC6へと変化し…といった具合で、曲の好き嫌いとは別に、作曲で行われている技術が大変に高度、プロフェッショナルです。
そして、その難しい楽曲を演奏するミュージシャンが豪華です。マイケル・トンプソンなど、クレジットにはアメリカでもトップクラスのミュージシャンの名前が並びますが、これぐらい高度な楽曲をロック/ポップス系の世界で綺麗に響かせるには、当時の日本のスタジオミュージシャンのレベルでは難しかったのかも知れません。
パブリックイメージとは裏腹に、大変に優れた作曲家である矢沢永吉を知る事の出来る素晴らしいアルバムであるとともに、80年代の日本のロック/ポップスを代表するアルバムのひとつでもあると思います。